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最高裁判所第二小法廷 昭和63年(オ)270号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高荒敏明、同山田雅康の上告理由第一点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第二点について

人事訴訟手続法一五条一項は、裁判上の離婚に際し、子の監護をすべき者その他子の監護につき必要な事項を定めるものとしている民法七七一条、七六六条一項の規定を受け、裁判所が、申立により離婚訴訟の判決で右の事項を定めることができるものとしている。そして、民法の右条項は、子の監護をする父母の一方がその親権者に指定されると否とにかかわらず、父母の他方が子の監護に必要な費用を分担するなどの子の監護に必要な事項を定めることを規定しているものと解すべきである。したがって、離婚訴訟において、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、子を監護する当事者をその親権者に指定すると否とにかかわらず、申立により、子の監護に必要な事項として、離婚後子の監護をする当事者に対する監護費用の支払を他方の当事者に命ずることができるものと解するのが相当である。原審が、被上告人の本件離婚請求を認容するに際し、被上告人と上告人との間の二男二郎の親権者を被上告人と定めるとともに、後記のとおり取り下げられた部分を除き、原判決確定の日(本判決言渡の日)の翌日から二郎が成年に達するまでの間の養育費の支払を上告人に対して求める被上告人の申立につき、二郎の監護費用の支払の申立としてその支払を命じた点に所論の違法はない。所論引用の判例は、本件と事案を異にする。論旨は採用することができない。

なお、被上告人は当審において、原判決主文第一項に関する申立のうち、原判決確定の日(本判決言渡の日)までの二男二郎の養育費の支払を求める部分を取り下げたので、原判決はその限度で失効し、その主文第一項中「昭和六〇年二月一日から昭和六七年四月一三日まで」とあるのは、「本判決確定の日の翌日から平成四年四月一三日まで」と変更された。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤島 昭 裁判官 島谷六郎 裁判官 香川保一 裁判官 奥野久之 裁判官 牧 圭次は、退官につき署名押印することができない。裁判長裁判官 藤島 昭)

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